【平家物語 第1巻 4 鱸〈すずき〉】〜The Tale of the Heike 🪻
仁平《にんぺい》三年正月、忠盛は、五十八歳で死に、 息子の清盛《きよもり》が、跡を継いだ。 清盛は、父親にもまして、才覚並々ならぬ抜目のない男だったらしい。 保元《ほげん》、平治《へいじ》の乱と、 権力者の内紛に、おちょっかいを出しながら、 自分の地歩は、着々と固めていって、 さて皆が、気がついた時分には、 従一位《じゅういちい》、太政大臣 平清盛という男が、でき上っていた。 異例のスピード出世というところである。 この時代は、成功も失敗も、一様に、神仏に結びつけたがる傾向があった。 平氏の繁昌《はんじょう》振りをみて、 これは、熊野権現《くまのごんげん》のご加護だと誰からとなくいい出した。 …